【子供連れ去りと未成年者誘拐罪での告訴】
2023/12/27
ブログをご覧頂きどうもありがとうございます。
今日は子供連れ去りと未成年者誘拐罪での告訴についてのお話です。
まず前提として、告訴と被害届の違いについて確認しておきましょう。
被害届は、「私は、こういう犯罪の被害に遭いました。」ということを警察に申告するだけのものです。警察は、被害届は案外簡単に受理してくれます。
告訴状は、「私は、こういう犯罪の被害に遭ったので、厳正に捜査の上、厳重に処罰してください。」という意思表示を行うものです。
当然告訴状の方が効力は大です。その代わり、実際問題として、警察は告訴を受理したがりません。その理由は、単純に、「仕事が増えるから」です。
さて、片親(母親であることがほとんどです)がもう一方の親の同意なく子供を連れ去る行為は、刑法第224条の、「未成年者誘拐罪」に該当します。
私は、先日まで担当していた案件で、未成年者誘拐罪での告訴状を警察署に受理させることに成功しました。
私は元検察官ですから、告訴状に記載しなければならない「告訴事実」というものも簡単に書けますし、元検事の私が警察署に一緒に行って、「元検事なんですよ」とひと言言うだけで、警察官にプレッシャーをかけることもでき、告訴を受理させやすくなるという効果もありました。
さて、では、なぜこの案件で告訴をしようと話になったのでしょうか。
この案件の母親は、とにかくひどい母親でした。証拠も警察官に提出しました。警察官も「これは悪質ですね」と話していました。
では、私は、この母親を、未成年者誘拐罪で処罰してもらうために告訴をしたのでしょうか。
答えは、否です。
もちろん送検の後起訴までいけばそれに超したことはありません。
しかし、元検察官の経験から言って、前科前歴のないこの母親について、公判請求までいくと考えられる事案ではありませんでした。いったとしても起訴猶予です。
ところが、警察は、告訴状を受理すると、すぐに母親に電話をし、呼び出しをかけてくれました。
「あなたに対して未成年者誘拐罪で告訴状が出ているので話を聞かせてください」と警察から母親に連絡が行くのです。
この時点で、母親は相当焦ったでしょう。母親に与えた心理的プレッシャーは相当大きなものがあったと言えます。
警察の取り調べは母親だけにとどまりません。警察は、母親が連れ去った子供達からも話を聞きました。
母親が受けた精神的心理的プレッシャーには計り知れないものがあったといえます。
今まで警察のお世話になったことがない人間ならなおさらです。
そして、書類送検された後は、今度は検察官から呼び出しがかかるのです。
所轄の警察からの呼び出しとは訳が違います。
その後、捜査を指揮し被疑者(母親)の処分を決める検察官の取り調べを受ける訳です。
母親は、検察官にどのような話をするかによって自分の処分が決められると思いながら極度の緊張の中話をするわけです。
私が担当していた事案では、検察官から呼び出しがかかった段階で、他の調停との関係で告訴を取り下げたので、検察官の取り調べまでは行きませんでした。
しかし、子供の連れ去り事案で告訴を警察に受理させるということには、非常に大きな意味があります。
つまり、家庭裁判所での、子の監護者指定、子の引渡しの調停や審判の交渉の際に、切れるカードが1枚増えるのです。
要するに、「子供を返したら告訴を取り下げる」「監護者を父親と認めるなら告訴を取り下げる」といった具合です。
我々弁護士は、このようにして交渉のカードを切ります。
今の私は、国会議員先生などとは違い、新しい制度を構築したり、法整備を行う仕事はできません。
個々の案件に取り組むいち弁護士に過ぎませんから、依頼者様に最大限の利益をもたらすために活動するのが仕事です。
もちろん、何でもかんでも告訴すればいいという訳でもありませんし、被疑者となる母親によっては、告訴することがマイナスとなることも十分にあり得ます。
私は、個々の案件ごとに、この案件は告訴をするべきか否かを慎重に検討しなければなりません。
私は、現在43歳、弁護士18年目ですが、ようやく私の弁護士人生をかけられる社会問題に遭遇したと現在考えています。
今後作られる共同親権制度のもとでも、実際の実務の運用では、いろいろな問題が発生することでしょう。
私は、これから新しく作られる制度が正しく機能し、父親、母親、特に一番に子供が、少しでも幸福になれるように仕事をしていこうと考えている所存です。
少々長くなりましたが、最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。
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